公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

すべてのいのちを尊び、思いやりの心を発揮して

立正佼成会常務理事・WCRP日本委員会特別会員 佐藤益弘

私は、昨年から気候危機タスクフォースに入れていただき、同年夏には埼玉県所沢市にある「WCRPいのちの森」に伺うことができました。そこで時間を過ごしていると自ずと心の中が浄化され、安らぎを覚えると同時に、木の有難さを体感しました。その後、その森に自生するコナラ三本がブナ科樹木萎凋(いちょう)病(ナラ枯れ病)に罹病してしまい、何とか延命できないものかと思いましたが、残念なことに伐倒・焼却処分することとなりました。

法隆寺の建築用材である檜は樹齢千三百年のものだそうです。その法隆寺堂塔解体修理に優れた手腕を振るわれた西岡常一・宮大工棟梁はつとに有名な方です。西岡棟梁が書かれた『木のいのち木のこころ』〈天〉の巻という本には、「木は生育の方位のままに使え」と記されています。山の南側の木は細いが強い。北側の木は太いけれども柔らかい。陰で育った木は弱いというように、生育の場所によって木にも性質があると言われます。それらを見分けて堂塔を建てると長持ちし、木を長く生かすことができると教えてくれています。同質の材木だけでなく、いろいろな性質の木を上手に組み合わせることで、建物が丈夫で長持ちすることを、我が心に刻みました。

以前、立正佼成会の信者から聞いた話です。その方は若い頃に冷蔵倉庫という低温室内で、十四年もの間、仕事をされました。退職後に、身体のあちらこちらに痛みが発症して悩まれたと言います。まず左手の手首が痛くなり、次に腕に痛みが移り、さらに痛みは首筋のところに移ったと言います。不思議なことに、痛みが他のところへ移ると、それまで痛かったところは痛みを感じないそうです。お医者さんに診てもらいましたが、特段異常はないと言われたとのことでした。私は、その方の話を通して、人間の身体も様々なものによって構成され、連携しながら協力しあっているということを学びました。

昭和五十九年三月、京都カテドラルにおいて日本委員会主催の「第十二回WCRP研究集会」が開かれた折、山田惠諦第二五三世天台座主猊下が、物事が円満成就する三つの要素をご教示くださいました。一、自分の努力二、周囲の人の協力 三、神仏のご加護 です。私自身、とても感動した「三力」を常に忘れず、すべてのいのちを尊び、思いやりの心を発揮して精進させていただきたいと思っております。

(WCRP会報2021年5月号より)

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