公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

日々の感謝の心

明治神宮権宮司・WCRP日本委員会理事 木下龍輝

令和五年、癸卯の正月、明治神宮は穏やかな晴天に恵まれました。コロナ禍が続く中、境内では大勢の参拝の方々がそれぞれ一心に祈りを捧げられておられました。

特に、成人または社会人になりたての若い方々が、ご年配の方々と同様に真摯に御神前で手を合わされ、お守り、おみくじ、御朱印を大事にお持ち帰りになる姿を拝見するたび、あらたまの年の初めに、改めて信仰のまごころの輝きにふれる気が致しました。

さて、現在、わたくしどもは、三年間にわたる新型コロナウイルス感染症の影響やロシアのウクライナ侵攻をはじめとする各地での紛争、温暖化などによる地球環境の変動、不況による生活の困窮などさまざまな問題に直面しております。殊に感染症の影響によって、人と人との交流が制限され、社会はリモートワークの利用拡大など大きな転換期を迎えております。この地球規模の変化がより良き方向に向かえばよいのですが、将来への明るい兆しをなかなか見いだし得ないのが実情です。

人々が真にめざすところを見失って彷徨う今日、いま一度、人としての原点に立ち返ってみる必要があるのではないでしょうか。国を超え、人種を超え、世代を超え、人と人が慈しみと思いやりをもって助け合っていくにはどうしたらよいのか。それには、大いなる存在のはたらきによって、日々の暮らしを営むことができることへの感謝、さらには、困難によって自らの内面を磨くことができる有難さを心の奥処からまず実感することが肝要であると存じます。

今日の逆境を糧として、支え合わなければ生きていけない人間としての分際を知り、国と国、人と人が争い合う世界の愚かさを改めて冷静にみつめること、祖先より受け継いできた大切な伝統の心の美を今の社会に活かして子孫へ伝えることを急務として、わたくしどもは互いの環境や文化の差異を理解し合った上で、協調してこの世界をより良く作り直し、未来へ引き渡す責務があります。

昨年、WCRPのオンライン会議の席上で活動報告をお伺いし、本会が世界に果たす重要性を改めて認識致しました。各宗教にはそれぞれの特色や教えがありますが、生きとし生けるものの幸せを願い日々の感謝の心をもって、大いなる存在に祈る目的は共通です。

自然を畏れ敬いつつ、慈愛に満ちた明るい心で、人々が共存共栄できる世をめざし、向後、本会理事としての責務を果たすとともに、日々の社頭奉仕を通し、ここ東京の代々木の杜から世界の平和と人々の心の平安を祈り続ける所存でございます。

(WCRP会報2023年2月号より)

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