公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

東日本大震災の追悼と鎮魂そして復興

東北大学名誉教授・WCRP日本委員会平和研究所所員 齋藤忠夫

2011年3月11日14時46分18秒・・・に起こった東日本大震災は、東北地方に未曽有の被害をもたらしました。あれから、10年を迎えた節目の2021年3月13日に、WCRP日本委員会により、東日本大震災の追悼と鎮魂ならびに復興合同祈願式を、仙台市若林区の鎮魂モニュメント「荒浜記憶の鐘」にて挙行しました。式典では、理事長の植松誠日本聖公会主教、立正佼成会等の祈りを含む各宗教(教派宗派)の祈り、災害対応タスクフォース責任者の黒住宗道黒住教教主からの挨拶がありました。私は、震災を受けた地元宗教者の一人として出席し、次のような挨拶をさせて頂きました。

大震災での最大震度は7であり、地震の規模は国内史上最大となるマグニチュード9.0でした。岩手、宮城、福島を襲った津波の高さは各地で10メートルを超えました。仙台市では海岸から約5㎞も内陸へ押し寄せ、北上川では50㎞も遡りました。巨大津波により亡くなった方は、阪神・淡路大震災をはるかに上回る1万6千人に上り、いまだに2500人を超える方々の行ゆくえ方が分かっておりません。一方、福島第一原発は、津波で炉心冷却が出来なくなり、水素爆発により大量の放射性物質が大気中に放出されました。その結果、今も4万人以上の方々が避難先での大変不自由な生活を余儀なくされております。

震災後のインフラの復興は国からの支援により確実に進み、14メートルを超える防潮堤新設、新道路建設、かさ上げによる高台住宅の建設などが完了しました。しかしそこに住む多くの方々の「心の復興」はこれからだといえます。現在でも、毎日海岸で亡くなった家族を探し続けている方、当時高校生だった息子さんへ携帯メールを送り続けているお父さん、そして当時小学生だったお嬢さんに毎日今もお弁当を作り続けているお母さんがいらっしゃいます。10年を経過した現在でも、悲しみを認められない沢山の方々がいらっしゃる現実を受け入れ、これらの方々を復興から取り残してはいけないと思います。

さらに私達には、今回の震災による大きな犠牲の下に得られた貴重な教訓を風化させず、後世に伝承していくという大きな責任があるかと思います。東北大学でも「3.11伝承ロード推進機構」を発足させ、今後被災地200か所で伝承して参ります。今後も多くの被災された皆さんに末永く寄り添い、励まし合い、笑顔で共に復興に取り組むことをお誓いしたいと思います。

(WCRP会報2021年9月号より)

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