2024年7月9日(火)から10日(水)に、広島にて「平和のためのAI倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」と題された国際会議が、教皇庁生命アカデミー、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、アラブ首長国連邦のアブダビ平和フォーラム、イスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会の四者共催の下、行われました。
2020年2月28日、フランシスコ教皇が「AI倫理に関するローマの呼びかけ」に署名し、2023年1月10日にローマで「Multi-religious signature of the Rome Call for AI Ethics」と題された国際会議が開催され、イスラム教・ユダヤ教・キリスト教の指導者と技術者が議論を交わしました。その会議の最後、「次はアジアだ」との声が上がり、今回の国際会議の開催に至ったのでした。
私は「福島原子力発電所爆発事故の現場に立つ牧師」の立場で出席し、多くの実りを得ました。特に印象深く思われたことを、以下に三点、記します。
会場となった広島国際会議場の入り口は、平和記念公園と原爆ドームを一望できる場所に続いています。その大切な場所に佇む方がおられました。お声がけし、あいさつし、名乗り合い、互いの宗教の様子を語り合う・・・そうした出会いに恵まれました。その方はDr. Brinder Singh Mahonさんというシーク教徒でした。私は初めて、シーク教の友人を得たのでした。
会議の中では、ふたつの「倫理」が交錯しながら模索されていたように思います。つまり「AIの倫理」と「AIを使う人間の倫理」です。この二つの議論は、今後、明確に区分けされなければならないと思われました。金光教の三宅善信先生が「東洋においては、パソコンにも命を感じ取る。そのことを前提に、AIも捉え直せないか」と踏み込まれました。そして、黒住教の黒住宗道先生が「ことさらに言わなくても当然理解されるべき常識を、AIが身に着けることができる未来が、近い未来に到来するか」と問われ、会議に参加した技術者各位から「それは難しい」という趣旨の応答を引き出し、「そうであれば、まず議論すべきは、AIを使う人間の倫理の確立だ」と応じられました。ここに、この後に続くべき進路が示されていたと思われました。
そして、何よりも、舞台裏を担われた篠原事務局長以下スタッフの皆様に、深く感じ入りました。理不尽も多くあったはずです。それを跳ね退けるチームワークと根性に触れることができましたことは、何よりも大きな収穫でした。
(WCRP会報2024年8月号より)