WCRP日本委員会は、2019年より、人身売買の被害に遭った方々の救済に取り組む団体と連携し、人身売買禁止ネットワーク（JNATIP）の運営メンバーとして活動してまいりました。
2025年2月26日、毎年恒例のJNATIP主催院内集会が衆議院第二議員会館にて開催され、一般参加者、メディア、国会議員を含む約60名が参加しました。本集会では、「性的人身取引が野放しになっている日本～新たな形の性的搾取の脅威～」をテーマに、以下の3団体が現状と対策について報告を行いました。現在日本で起こっている性的搾取の問題、インターネットが普及したことで起きる性被害の実態について詳しく説明されました。
１．一般社団法人ゾエ・ジャパン相談支援マネージャー
講演テーマ：『児童を巻き込む性的人身取引～セクストーション。CSAMの現状、対策の必要性～』
２．特定非営利活動法人レスキュー・ハブ
講演テーマ：『新宿歌舞伎町における路上売春問題～性的搾取被害の根絶に向けて～』
３．特定非営利活動法人ぱっぷす
講演テーマ：『日本における性搾取に終止符を～相談支援現場からの声～』
人身取引の定義書では、「人身取引」について次の通り定めています。
（警視庁ウェブサイト参照）
一般社団法人ゾエ・ジャパンは、児童の性的人身取引や性的搾取（CSEC, CSAM, セクストーションなど）の被害実態を指摘し、緊急な対策の必要性を訴えました。オンラインでの性的脅迫（セクストーション）が深刻で、被害者の3人に1人が自傷行為や自殺を試みるなど深刻な影響を受けています。特に日本では、児童性的虐待コンテンツ（CSAM）の売買がSNS上で広がり、その対策が追い付いていません。また、漫画やアニメなどのメディアにおける児童の性的対象化を防ぐため、新たな規制強化が必要であることを主張。さらに、早期介入や性教育を含めた包括的な対応策を強化し、NGOとの連携強化も推進しています。
特定非営利活動法人レスキュー・ハブは、新宿歌舞伎町における路上売春問題に焦点を当て、被害者の多くが警察や公的機関への相談をためらい、孤立してしまう現状を報告しました。特にホストクラブの売掛金問題を背景に、女性が違法風俗や売春へと追い込まれるケースが多発しており、罰則規定の導入や性産業への斡旋禁止の必要性が訴えられました。また、政府による風俗営業法改正案の提出により、悪質な性的搾取への対応が進むことが期待されています。
特定非営利活動法人ぱっぷすは、AV被害やリベンジポルノを含む性的搾取問題への支援活動を展開し、相談支援、拡散画像の削除要請、政策提言などを行っています。性的搾取の構造には、ホストクラブやスカウト業者によるマインドコントロールが関与し、若年女性が借金漬けになり売春やAV出演へと追い込まれるケースが多いと指摘しました。セクストーションの被害も深刻で、加害者は心理操作を駆使して被害者を支配しています。これらの問題に対応するため、性的搾取を儲からない仕組みに変え、買春行為の罰則強化や法改正、居場所支援の拡充を進めるべきと提言しています。また、性的搾取を根絶するために、「ノルディックモデル」（買う側を犯罪化、売る側を非犯罪化）の導入が必要と訴えかけました。
集会の結論と今後の展望
院内集会では、「150人の被害者を救うには、1人の加害者を出さないことが重要」という視点が共有されました。また、性的搾取の根絶には、社会の文化や価値観を変えていく必要があることが強調されました。三団体が共通して訴えたのは、持続的な人材・財政支援の確保と、被害者となる女性や子どもが「NO」と言える環境の整備でした。
最後に、JNATIPは「性的人身取引－新たな形の性的搾取に対する緊急要請書」を採択し、人身売買の関係省庁に提出することを決定し、院内集会に参加した議員へ協力を呼びかけました。
宗教者の果たす役割
宗教は、困難に直面する人々に寄り添い、希望を与える力を持っています。被害者の回復には、精神的な支えや尊厳の回復が不可欠であり、宗教的コミュニティが果たせる役割は大きいです。また、被害者の心理的・精神的ケアに加え、地域社会における啓発活動や政策提言を行うことも可能です。例えば、性搾取の問題に関する認識を広め、信徒に対して加害行為を防ぐ教育を推進することが重要です。
今後もJNATIPのメンバーとして、現場で支援を行う団体と協力しながら、宗教者が果たすべき役割をより明確にし、実効性のある支援の枠組みを構築してまいります。
©Religions for Peace (WCRP) Japan
＜JNATIPの主な構成団体＞
ゾエ・ジャパン、ぱっぷす、レスキューハブ、ノット・フォー・セール・ジャパン、公益財団法人 日本キリスト教婦人矯風会、ECPAT／ストップこども売春の会、チャイルド・ファンド・ジャパン、移住者と連帯する全国ネットワーク、世界宗教者平和会議日本委員会、救世軍
