世界宗教者平和会議(Religions for Peace)国際執行委員会声明
2025年7月16日 (仮訳)
トリニティ実験から80年という節目を迎えるにあたり、世界宗教者平和会議(レリジョンズ・フォー・ピース)国際執行委員会は、核兵器の完全廃絶に向けた揺るぎない決意を、ここに改めて表明いたします。
1945年7月16日、アメリカ・ニューメキシコ州ホルナダ・デル・ムエルト砂漠において、人類は史上初となる核兵器の爆発実験を行い、極めて危険な一線を越えることとなりました。「トリニティ実験」として知られるこの前例のない行為は、周辺に暮らす先住民族や農村地域の方々の十分な同意も得ないまま実施され、人類がこれまで経験したことのない存在そのものを脅かす時代の幕開けとなりました。そのわずか3週間後には、広島と長崎に原子爆弾が投下され、20万人を超える市民の尊い命が奪われました。
私たちは、トリニティ実験を単なる「最初の爆発」としてではなく、核兵器にまつわる深い心の傷、環境破壊、そして倫理的な過ちの象徴として、決して忘れることなく記憶し続けます。
核軍縮に向けた宗教界の取り組み
世界各地の宗教者・宗教コミュニティは、長きにわたり核兵器廃絶を求める声をひとつにしてまいりました。すべての宗教伝統が核軍縮を同じ解釈で捉えているわけではないことは私たちも認識しておりますが、レリジョンズ・フォー・ピースは1970年の設立以来、一貫して、核軍縮は単なる政治的立場ではなく、倫理的・精神的な使命であると堅く信じ、推進してまいりました。また、真の軍縮は一朝一夕で成し遂げられるものではなく、不断の努力を要する継続的な過程であることも認めております。それでもなお、私たちは揺るぎません。持続可能な平和への道は、人類を滅ぼし得る兵器によって築かれるべきものではありません。核兵器の廃絶は、単なる戦略目標にとどまらず、人類共通の道徳的必然であると確信しています。文明そのものを脅かす兵器に、私たちの共通の未来において居場所はありません。私たちは宗教の違いを超えて、いのちの尊厳、公正の追求、そして平和への祈りを固く共有し続けます。
これまでの歩みと実践
レリジョンズ・フォー・ピースは、半世紀以上にわたり、核兵器廃絶を求める世界的な提言活動の最前線に立ち続けてまいりました。特に、歴史的な「Arms Down!」キャンペーンでは、信仰に根ざした草の根の力を結集し、2,000万筆を超える署名を国連に提出するという画期的な行動を実現いたしました。私たちは今もなお、各宗教界のリーダーやコミュニティが現場で具体的な行動を起こせるよう、実践的な支援を続けています。
その一環として、2017年の核兵器禁止条約交渉に向けたハンドブックや、核軍縮に関するリソースガイドなどの教材を提供し、草の根からの提言力を高める取り組みを推進しております。
私たちは、核攻撃や核実験の被害を経験された被爆者の皆さまと共に歩むことを大切にし、ノーベル平和賞受賞団体「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」との連携を通じて、核兵器のない世界の実現をめざして取り組んでまいりました。
2015年、レリジョンズ・フォー・ピースは、国会議員や各国の市長らと協力し、広島・長崎への原爆投下から70年、そして国連創設70年という歴史的な節目にあたり、
共同声明「核兵器のない世界――私たち共通善」(A Nuclear-Weapon-Free World: Our Common Good)を発表いたしました。この声明では、「核兵器の廃絶は最も高次の共通善である」と明確にし、世界の指導者たちに対して、核抑止を乗り越え、共通の安全保障と持続可能な平和を実現するよう強く呼びかけています。
レリジョンズ・フォー・ピースはまた、国連においても重要な役割を果たしてまいりました。2023年および2025年の核兵器禁止条約(TPNW)締約国会議をはじめ、国連総会第一委員会、国連軍縮委員会、ジュネーブ軍縮会議など、主要な軍縮関連機関との積極的な対話と提言活動を続けています。
改めて行動を呼びかけます
1970年、レリジョンズ・フォー・ピースは第1回世界大会において発表された京都宣言で「人類のこの地球上での存続は、核による絶滅の脅威にさらされている」と警告しました。その警告は、今日ますます切実さを増しています。
核兵器を保有している国はわずか9か国に限られるものの、そのうち7か国がいま現在、深刻な緊張状態または武力衝突に関わっています。最近のイランにおける核関連施設への攻撃は、世界における核差別(グローバル・ニュークリア・アパルトヘイト)の現実を改めて浮き彫りにし、通常兵器による戦争がいかに容易に核の惨禍へと発展しうるかを痛切に思い起こさせます。核軍縮への国際的な支持は着実に広がりを見せていますが、現実としては進展が滞ったままです。現在でもおよそ1万2500発の核弾頭が存在し、莫大な資金が核兵器の近代化に投入され続けています。その一方で、人間としての尊厳や倫理的視点は、国際的な安全保障の議論から置き去りにされがちです。いまこそ、人類が道義的勇気を結集すべき時です。私たちは、すべての宗教者および善意ある人々に呼びかけます。核による緊張の緩和を強く訴え、人間の尊厳と共通の安全保障に根ざした政策を推進するために、声をあげ行動していただきたいと願っています。
トリニティ実験の記憶を、私たちの決意をより一層強める糧としましょう。その記憶は、人類がいかなる危機に直面しているのか、そして平和のために共に行動することで何がいまだ可能であるのかを、私たちに改めて思い起こさせてくれます。この精神のもと、私たちはすべての国々に対し、核兵器禁止条約(TPNW)の普遍化に賛同し、積極的に支持することを強く呼びかけます。それこそが、核兵器の完全廃絶へと至る、具体的かつ不可欠な道筋であると確信しております。
私たちは、倫理に例外はないという原則を改めて確認するとともに、国際条約の枠組みの外で核兵器を保有し続けている一部の国家や主体の存在に対し、深い懸念を表明いたします。特に、核不拡散条約(NPT)に署名していない、あるいはその核関連活動を国際的な透明性ある監視の下に置いていない国家や主体を含みます。こうした説明責任を欠いた形で核能力を維持することは、国際社会の信頼を損ない、二重基準を助長する風潮を強める結果となります。公正で持続可能な平和を築くためには、国際法の下で全ての国が平等に扱われ、核軍縮の原則が普遍的かつ無差別に適用されることが不可欠です。そして私たちは、核兵器禁止条約(TPNW)の枠組みのもとで、核兵器のない世界が実現されることこそが、すべての人々の安全を確かなものにする唯一の道であると、強く確信しております。
英語版声明文
日本委員会では、戦後80年「核なき世界」オンライン キャンペーン実施中です。
#核なき世界へ #戦後80年核廃絶 #祈りと対話で核廃絶
#TrinityToHiroshimaNagasaki #NoMoreHibakusha #FaithsForPeace