
2025年10月23日~25日
WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会女性部会は、沖縄県の中部および北部を訪問し、2025年度の宗教別学習会を開催しました。
女性部会ではこれまで、WCRP日本委員会加盟・関係教団を訪問し、各教団の歴史や教義、平和の取り組みを学ぶとともに、相互理解を深める活動を重ねてきました。宗教・文化を越えて、平和と共生に資する実践を模索する中で、宗教別学習会はその中核的な学びの機会として位置づけられています。
今回の学習会の舞台となった沖縄県は、日本国内で唯一の地上戦を経験し、今なおその歴史と痛みを深く抱える地です。同時に、琉球王国として独自の歴史と文化を育んできた背景を持つ地域でもあります。そのため、現地の歴史的・文化的背景に触れることは、単なる追悼にとどまらず、「いのち」への深い洞察と現代社会への問いかけへとつながります。
本学習会では、戦争の記憶を受け継ぎながら、宗教・文化・立場を越えて共に生きる社会のあり方を見つめ直し、すべてのいのちの尊厳を起点に、多文化共生、ジェンダー平等、非暴力・非戦の価値を参加者一人ひとりが自らの立場から深く考える場となることを願って実施しました。
女性部会委員を含め合計15名の参加者が集い、現地の宗教関係者や市民と出会いながら、祈りと対話を通して「沖縄から学ぶ平和」を深めました。
【1日目】沖縄の宗教と平和の現場にふれる
当日は雨の予報にもかかわらず、那覇空港に降り立つと青空が広がり、まるで祈りに応えるかのような穏やかな光が参加者を包みました。
初日
は、那覇市内から糸満市に向かい、平和祈念公園を訪問しました。
平和祈念公園では、国立戦没者墓苑、平和の礎、そして韓国人慰霊塔で献花と黙祷を捧げ、すべての戦争で犠牲となった人々の魂に祈りを捧げました。
女性部会は、国籍・文化・宗教を越えて、すべての戦争で犠牲となられた命に対して深い敬意と追悼の祈りを捧げます。この場で、私たちは改めて過去の歴史を見つめ直し、平和の原点を再認識しました。
「対話は、信頼があってこそ成り立つもの。」
女性部会は今後も、対話を続けるために、信頼関係を築くことを何よりも大切にしていきたいと感じました。
続いて、ひめゆりの塔を訪問。1945年の沖縄戦で命を落とした沖縄師範学校女子部・沖縄県立第一高等女学校の生徒や教師のため、青年女性3名が代表して献花と祈りを捧げました。若くして戦火に倒れた彼女たちの無念と、平和への願いを胸に刻み、次世代への継承の思いを新たにしました。
【2日目】証言と対話 ~そして現場から考える戦後80年~
2日目は、本学習会のメインプログラムである対話プログラムから始まりました。「戦後80年の沖縄からいのちを見つめ、女性と宗教の声を未来へつなぐ」をテーマに、浦添市にある日本聖公会沖縄教区様の会場をお借りして実施しました。会場とオンラインを合わせて約80名が参加し、戦後80年を生きる私たちにとっての「平和の継承」について、語り合いました。
今回の対話プログラムには、
の四名をお迎えし、それぞれの立場から戦争体験・人権・女性の歩みについて語っていただきました。
高里先生には、琉球王国の歴史をふまえ、沖縄戦における住民被害や女性の受難、戦後の米軍基地被害の深刻さを語っていただきました。少女暴行事件後の8万5千人の抗議行動を例に、被害者が声を上げ続けることの重要性を強調し、「沈黙は暴力を助長する」として、基地撤去とジェンダー平等の実現を訴えました。
島牧師からは、「沖縄差別」とアイデンティティの喪失という痛みを自身の経験から語り、戦争で失われた命の一つひとつに“名前と物語”があることを思い起こしました。抗議船の船長として海に立ち続ける日々の中で、自然の営みに励まされ、「誰も戦争で死なせない、基地を子孫に残さない」という願いを参加者と共有しました。
今年100歳を迎えた大嶺直子さんは、学徒として第32軍司令部で勤務し、のちに野戦病院で看護隊として戦場を見届けた体験を静かに語りました。壕の暗闇で兵士の家族写真を見つめながら感じた“いのち”の重さ、戦後に米兵へドレスを縫った「昨日の敵は今日の友」という記憶を通じて、平和の芽生えを伝えました。
「今を生きるあなたたちに、二度と戦争のない未来を渡したい」——その言葉に、会場全体が深く耳を傾けました。
そして最後に、アクションプランとして、さまざまな団体や市民とのネットワークを強化し、学びを即行動につなげていくことの重要性が参加者全体に強く訴えられました。
【3日目】沖縄信仰の学びと女性部会のふりかえり
最終日は、世界文化遺産であり、琉球王国最高の聖地とされる斎場御嶽(せーふぁうたき)を訪れました。
斎場御嶽(せーふぁうたき)は琉球語に由来する言葉で、日本語には完全に訳せません。琉球の音を漢字であてた「斎場御嶽」は、琉球王国における最高位の聖地であり、かつては男子禁制の神域でした。ここでは、王族の女性が最高位の神女「聞得大君(きこえおおきみ)」として就任の儀式を行い、祈りを司ってきました。現在では“パワースポット”として知られていますが、本来、その「力」は外にあるのではなく、私たち一人ひとりの内に宿る力を思い出させるものです。この地は、自然と祖先、そしていのちへの感謝を捧げ、自らの内なる祈りに気づく場所でもあります。女性部会としてこの聖地を訪れ、祈りを受け継いできた女性たちの歩みと静かに響き合いながら、「いのち」と「祈り」を見つめ直すひとときとなりました。
訪問後は、今回の3日間をふりかえる時間を持ち、参加者一人ひとりが学びや気づきを共有しました。沖縄の地で見つめた「いのちの尊厳」への思いを胸に、今後の女性部会の活動へとつなげていく決意を新たにしました。
3日間の学びを通して、私たちは沖縄に息づく祈りと平和への願い、そして人々の強さに出会いました。
この宗教別学習会の実現にあたり、ご協力くださったすべての皆さまに心より感謝申し上げます。


【来年春開催予定!】
WCRP日本委員会女性部会主催の「いのちに関する学習会」
詳細はWCRP日本委員会公式HPやSNSで告知します!