
2025年10月10日、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会とReligions for Peaceオーストラリア委員会の共催により、COP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)に向けた気候危機学習会がオンラインで開催されました。
本学習会は、「いのちのつながりのなかで、ともに祈り、ともに立つ ― 調和と再生の選択 ―」をテーマに、地球規模の気候危機に対する宗教者の応答を探ることを目的として行われました。
2025年11月、ブラジルで開催されるCOP30は、国連気候変動会議が始まってから30年という節目を迎えます。近年、世界各地で発生している豪雨災害や山林火災など、気候変動に伴う被害は深刻さを増しており、もはや誰も無関係ではいられません。本学習会では、こうした現実を共有し、世界的視点から環境課題を学ぶとともに、各宗教・宗派において実践可能な取り組みを模索する場としました。
当日は、日本およびオーストラリアから以下の登壇者を迎え、宗教的観点から気候危機への応答について多面的な議論が行われました。
瀬本正之 神父(カトリック東京大司教区 ラウダート・シ部門)
西野文貴 博士(株式会社グリーン・エルム代表取締役)
Prof. Anne Pattel-Gray(神学者、Religions for Peaceオーストラリア委員会)
Rev. Prof. Upolu Lumā Vaai(Pasifika Communities大学)
それぞれの地域に根ざした経験と信仰の視点から、気候変動の倫理的課題、持続可能な社会構築への道、そして自然との「調和と再生」を目指す取り組みが共有されました。
学習会の最後には、COP30に向けた環境正義を求める日豪宗教者共同声明が採択されました。
この声明文は、2025年11月10日からブラジルで開催されるCOP30において、Religions for Peace国際委員会のサイドイベントで発表される予定です。宗教者がいのちの尊厳と地球の未来のために連帯して行動する決意が込められています。
WCRP日本委員会は、引き続きアジア・太平洋地域の宗教者と協働し、環境正義の実現と気候危機への信仰的応答を深化させてまいります。
パリ協定採択10 周年を迎え、またブラジル連邦共和国・ベレンで開催されるCOP30 に先立ち、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会とオーストラリア気候変動に対する宗教者レスポンス(ARRCC)は、RfP オーストラリアの支援を受け、本日開催された「気候危機学習フォーラム2025― COP30 に向けた宗教者のつどい」において、以下の共同声明を発表する。
まずもって、近年ブラジルの人々が熱帯雨林保護において成し遂げた成果に大きな希望を見出すものである。ブラジル政府によれば、2023 年の森林破壊率は前年に比べて30%以上減少したという。我々は、国際社会と共に、ブラジルの人々の誠実な努力と顕著な成果に深い敬意を表する。
2015 年以来、国際社会は、低炭素かつ強靱な社会の実現に向けたグローバルな行動の喚起、国連事務総長による気候行動の強力なリーダーシップ、新たなパートナーの参画による行動と成果の可視化を通じて、気候行動を強化してきた。しかし、これらはいずれも決定的な効果を生み出していない。むしろ、世界は現在「地球沸騰の時代」と呼ばれる状況に入っている。大規模な山火事、海水温の上昇、集中豪雨、壊滅的な洪水、急速な雪解け、そして太平洋島嶼国(PICs)における土地の喪失と海面上昇による強制移住に直面している。
最も深刻な影響を受けるのは、開発途上国、先住民、脆弱なコミュニティであり、生計のみならず住居までも失う存在的脅威にさらされている。その被害は人間社会にとどまらない。オーストラリアでは、長期にわたる干ばつと記録的な高温により山火事が発生し、推定10 億匹の野生動物が死亡し、4 億トン以上のCO₂が放出された。この災害は「ブラックサマー」として記憶され、地球温暖化を加速させた。このような事例は枚挙にいとまがない。
気候変動の根本原因は、人間活動によって排出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、窒素酸化物など)の異常な蓄積にある。そこには過剰な自己/自国中心主義があり、自分/自分の国さえ良ければよいという考えが、独善的で排他的な風潮を国際社会に蔓延させているのである。また、行き過ぎた生産と消費と使い捨てによる利益追求が世界に過去最大の経済格差を生み出し、グローバルサウスの貧困を慢性化させ、環境を劣悪のものとしている。その被害を受けるのは化石燃料をあまり使ってこなかったグローバルサウスの人々と現在に存在さえしていない将来世代である。特に問題となるのは、液化天然ガス(LNG)の過剰生産である。科学者たちはもはやLNGを「移行燃料」と見なしておらず、逃逸ガスや凍結・輸送の必要性を考慮すると、LNG は他の化石燃料と同等かそれ以上に有害である。
さらに、国家のエネルギー安全保障を名目としつつ、企業利益のために、日本企業はオーストラリアの先住民の神聖な土地や自然環境を開発し、天然ガスを採掘している。このプロセス自体が気候危機を悪化させるものであり、オーストラリアがCOP31 の共同開催候補国とされる中でも深刻な問題である。
オーストラリア国防軍(ADF)および国防省の元幹部による報告書『Missing in Action』では、地球温暖化が「オーストラリアにとって最大の安全保障上の脅威」であると指摘されている。
我々は、すべての生命を尊ぶ宗教の伝統に立ち、地球が直面する気候危機に深い憂慮を表明する。気候変動は単なる環境問題ではなく、その対策は人類全体に対する倫理的課題であり、未来世代に対する責任そのものである。
多くの宗教において、地球はすべての生命が相互依存する神聖な共同体である。フランシスコ教皇は回勅『ラウダート・シ』において、世界への希望のメッセージとしてこう述べている。「気候は共有の財産であり、すべての人のものであり、すべての人のためにある」(第23 段落)。東洋の宗教的叡知もまた、すべての生命は等しく尊く、それぞれ独自の性質を持つと教える。それは人間のみならず植物にとっても同じことで、その土地に古くから根付き育まれた植物であればこそ、深く根を降ろして土壌を保ち水をよく貯える。現在、砂漠化した場所であっても、元々緑が存在していた土地であれば、その土地に適した植物を植えることで緑が再生可能である。命自体が自然に養われることから、自然は人類の母と呼ぶにふさわしい。現在求められている
のは、自然を搾取の対象としてではなく、共に生きる隣人として尊重する視点である。
この信念に基づき、我々はCOP30 の参加者に対し、地球と人類の持続可能性のため、以下の緊急提案を行う。
我々は異なる宗教・伝統を超えて、若者、女性、先住民の多様な声に耳を傾け、その叫びを国際社会に届け、世代を超えた連帯を育み、共有の地球を守り続ける決意を持ち続ける。
最後に、私たちは希望を表明する。気候危機は深刻な試練であると同時に、人類が簡素で豊かな生活、自然と調和する文化へと向かう機会でもある。生命を尊び、持続可能な地球を未来世代に引き継ぐため、COP30 に集うすべての人々に勇気ある決断を強く求める。
日本とオーストラリアの宗教指導者として、我々はこの道を共に歩み、行動を続けることをここに宣言する。
(英語バージョンはこちら)