公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

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お知らせ
2025.8.14
国際関係 提言・リリース

核兵器廃絶に関する声明

2025年8月3日および10日に開催された核兵器廃絶オンラインワークショップにご参加くださった全ての登壇者の皆さま、そしてご視聴くださった皆さまに、心より感謝申し上げます。

本イベントは、原子爆弾投下、第二次世界大戦終結、そして国連創設から80周年という節目を記念して行われました。

8月10日のワークショップでは「核兵器廃絶に関する声明」を発表し、アジア太平洋地域から世界へ向けてメッセージを発信いたしました。

本ワークショップの詳細は、後日お知らせいたします。


核兵器廃絶ワークショップ(2025年8月10日)声明

― 原子爆弾投下、第二次世界大戦終結、そして国連設立から80年を契機として ―(仮訳)

 

私たち、アジア太平洋地域の宗教指導者および市民は、非軍事化、軍事的緊張緩和、そして核兵器の世界的廃絶を訴えるために、このワークショップに集いました。私たちは、かつて人類に前例のない死と破壊をもたらし、今なお脅かし続けている核兵器の重大な危険性を改めて表明します。

広島と長崎への原爆投下から80年を迎えた今日、私たちは被爆者の証言、そしてオーストラリアや太平洋諸島での核実験被害者の経験に耳を傾けました。彼らの「自らの苦しみを未来の世代に繰り返させてはならない」という切実な訴えは、核兵器廃絶を不可避の課題として示しています。私たちはその声に応え、核兵器の完全廃絶を実現する揺るぎない決意をここに表明します。

2025年現在、核兵器使用の危険性は極めて高まっています。世界にはおよそ1万2千発の核弾頭が存在し、そのうち2千発以上が即時発射可能な状態にあります。その90%を米国とロシアが保有しており、両国の指導者は今年、核兵器使用のいかなる可能性を公然と示唆しました。さらに、中国は600発以上の核弾頭を保有し、世界のどの国よりも最も速いペースで核戦力を拡大しています。加えて、ヨーロッパや中東の複数の国々が核兵器保有能力の獲得に向けてその動きを強めています。ストックホルム国際平和研究所は「新たな核軍拡競争が始まった」と警告しています。

宗教的・精神的教えと価値観に基づき、宗教指導者とその共同体は、世界各地で正義、安全保障、非軍事化、平和の促進に重要な役割を果たしてきました。2019年に開催された第10回世界宗教者平和会議(WCRP)世界大会では、世界の宗教指導者たちが「他者と自分自身の幸福は元来ひとつのものであり、私たちはすべて繋がり合ういのちであるからこそ、一人ひとりの人間の尊厳や生態系のあらゆる生命は等しく尊重され守られるべきである」という理解を確認しました。

核兵器廃絶を求める論理的な立場は、核兵器が軍事的緊張のエスカレーションを招き、環境破壊の脅威をもたらし、必然的に民間人を標的とし、人類と生態系を破滅に導く危険性があること、そして緊急性の高い人道的配慮から離れ、貴重な資源を奪ってしまうことが挙げられます。信仰を持つ者にとっては、核兵器への反対は何よりも倫理的・道徳的な理由に基づくものです。核兵器の使用・開発・実験・製造・保有・移転・貯蔵・使用の威嚇といったあらゆる行為は、倫理的にも道徳的にも容認できません。

私たちは、核抑止論が核兵器廃絶の大きな障害であり、人類と地球に深刻な危害をもたらすものであると認識します。この理論は相互不信と疑念を生み出し、私たちの信仰や価値観と相容れません。ゆえに、宗教共同体として、私たちには平和を共に積極的に追求する道義的責務があります。

この信念に基づき、また原子爆弾投下80年を契機として、私たちは核兵器の完全廃絶への決意を改めて表明します。

  • 私たちは世界の指導者に対し、核兵器は人類と全ての生態系に破滅的な脅威をもたらし、いかなる状況においてもその使用は正当化できないこと、そして廃絶に向けたあらゆる措置を一刻も早く実施すべきことを訴えます。
  • 私たちはすべての国に対し、核兵器を国際法の下で禁止する「核兵器禁止条約」を支持し、その普遍的な批准と発効に向けて尽力するよう求めます。
  • 私たちは広島・長崎の原爆被害、核実験、原子力事故、ウラン採掘などによる被害を受けた人々の苦悩に対応するため、被害の調査と補償を行うよう、関係国および国際社会に呼びかけます。
  • すべての国が、核兵器の存在がもたらす生存上のリスクについての教育、そして対話を通じた平和構築と協力を推進することが不可欠です。

私たちは「ノーモア ヒバクシャ」という被爆者の切なる訴えに胸が締め付けられました。過去の戦争への真摯な反省と平和構築の責任を胸に刻み、核兵器廃絶のために尽力する決意を新たにします。私たちは、核兵器のない世界という希望を共有し、その実現のために粘り強い対話と祈りを続ける世界中の人々と連帯します。

核兵器廃絶に関する声明(英語版)