
アジア宗教者平和会議よりCOP30を振り返った声明文を掲載いたします。
ブラジル・ベレンで開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)は、「グローバル・ムチラン」と題する成果文書を採択し、閉幕した。ムチランとは、「共同作業」の精神を意味するブラジル先住民の言葉である。195の国と地域が出席し、市民を含め6万人以上が参加登録する大規模な環境会議であった。
世界各地で異常気象による熱波や干ばつ、山火事、大洪水などが悲惨なほど相次ぎ、地球温暖化の影響がますます顕著になっている。10年前に採択した「パリ協定」では地球の平均気温上昇を「2℃をはるかに下回る水準」に抑制しつつ、不可逆的な気候変動を回避するための科学的基準である1.5℃以内に抑える努力を追求することを掲げた。しかし、各国が掲げている最新の温室効果ガス削減目標では、この目標は到底達成できないことが明らかになっている。昨年、世界の平均気温は一時的に1.5℃以上高くなった。気候変動に歯止めがかかっていないどころか悪化の一途をたどっている。
こうした背景のもとで開かれたCOP30では、地球温暖化対策を強化することを決定した。これには、温室効果ガス排出削減の加速化や、2035年までに途上国における災害を軽減する資金を3倍に増やすことが含まれている。国連気候変動枠組条約のサイモン・スティル事務局長が示したように、「COP30は各国による『気候協力』が活発に機能していることを示し、人類が住み続けられる惑星のための戦いを継続させている」。
しかし、COP30にはいくもの重大な課題があったことを認めざるを得ない。争点となっていた「化石燃料の段階的廃止」実現に向けたロードマップ策定は、石油産油国らが反対の立場を固守したため、合意に至らなかった。損失と損害への資金支援をめぐる先進国と途上国の対立も続き、最終的に妥協案が成立し、拠出期間が延長されるとともに、義務から拘束力のない努力目標へと変更された。
さらに、各国の気候変動対策への姿勢が依然不十分であることも明らかになった。国連は2025年9月末までに各国の温室効果ガス排出削減目標の提出を求めたが、期限を守った国はわずか3割であり、提出期限を延長したものの最終的に目標を提出した国は6割にとどまった。
このような結果の背景には、気候変動によって犠牲を強いられている人々への共感、地球や人類全体への洞察、将来世代への配慮がなく、過度な利己主義や自己中心主義、異常な利益至上主義などが蔓延っているためである。
このCOP期間中、多くの世界の宗教指導者たちが、このような危険な風潮に対し、倫理的、道徳的、そしてスピリチュアルな観点から公に異議を唱え続けた。COPの会場やオンライン、さらには文書を通して、人類と地球の共通善、そして一人ひとりの尊厳について想いを馳せ、訴え続けたのである。
COP30が終了した今、私たちアジアの宗教者は、現在の気候危機に対する深い憂慮を示し、地球と人類の持続可能性に向けて、世界の政治指導者に対する切なる要望を以下の通り表明する。
・気候変動対策に関する政府間交渉と計画づくりの段階は終了した。今こそ行動の時である。速やかに「交渉」から「実行」へと重心を移行されねばならない。
・各国は、偏狭な自国中心主義や過剰な利益追求主義を棄て、人類全体の共通利益のために団結すること。気候変動対策が成功するためには、国際協調と各国間の信頼醸成の強化が不可欠である。
・1.5℃抑制を諦めてはならない。各国は、この目標達成に今一度、真摯に対策を講じ、実行すること。
・化石燃料からの脱却はすでにCOP28で合意されている。この移行に向けた具体的なロードマップの策定が極めて重要である。その意味でCOP30では策定されなかったが、今後、次期議長国であるブラジルがこのイニシアチブを推進し、COP31で進展させることへの期待を表明する。
・先進国は、気候変動によって被害を被る人々に対する支援を強化すること。COP30で約束した2035年までに途上国における災害を軽減する資金を3倍に増やす方針を確実に履行すべきである。
・化石燃料から再生可能エネルギーへの意向を可能な限り早期に加速させること。
アジア宗教者平和会議(ACRP)は、政治指導者や国連、市民社会とともに持続可能な世界の実現に対する責務を果たす決意である。私たちは第9回ACRP大会(2021年)において、宗教コミュニティの社会的責任を再認識した。私たちは「誰一人取り残さない」世界の実現に向けて、地球上のすべての生命の共同体を構築し、クリーンな世界を将来の世代に残すことを誓い合った。私たちは気候変動対策の柱である脱炭素化運動を最優先課題と位置づけ、私たちの祈りと行動を続けていく。
詳細は、ACRPウェブサイトを参照ください。
https://rfpasia.org/a-statement-of-reflecting-on-cop-30/