公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

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2021.6.03
提言・リリース

WCRP日本委員会「出入国管理及び難民認定法改正案に対する人道的見地を求める声明」

公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
出入国管理及び難民認定法改正案に対する人道的見地を求める声明

5月18日、政府・与党は、外国人収容と送還のルールを見直す出入国管理及び難民認定法改正案(以下、「本法案」)の今国会の成立を断念しました。WCRP日本委員会は、本法案が、移民・難民を日本社会からの排除を促しかねない危険な法律になることに懸念を表明し、人道的知見が本法案のすべての施策に貫かれることを求めます。

これまでの日本の入管収容及び難民認定制度は、国際的な人権基準を十分に満たしているとは言えず、国連の人権関係機関から再三にわたる勧告を受けてまいりました。最近では、2020年9月に国連人権理事会恣意的拘禁作業部会が、難民申請者に対する差別的な対応が常態化していることや入管収容が恣意的拘禁にあたること等が国際法違反であるとの指摘がなされました。

本法案は、こうような日本の状況を一部改善するものですが、しかしながら、一人ひとりの尊厳を守るという人道的観点が乏しく、すべての人々の基本的人権が十分に尊重されるものではないと言わざるを得ません。長期収容の解消と送還促進を図るのが、本法案の目的と言われていますが、紛争や内戦、環境破壊等よって自国を追われ、日本に逃れた人々の保護こそが優先されるべきと考えます。

本法案には、日本に保護を求めた人々の処遇の悪化につながると考えられる内容が多く含まれています。例えば、難民申請中の送還停止の規定に例外が設けられ、正当な手続きなしに出身国に難民が強制的に送還される可能性があること。身体の自由を制限する収容の可否を、司法の審査によらず入管当局が決めることや、その収容期間に上限がないこと。「人道配慮による在留許可」に代わる制度として、難民には該当しない「補完的保護対象者」が規定されているが、国際的な規範よりも非常に限定的に定義されていること。そして一定の要件のもとで退去の命令に従わない人を犯罪者とし、刑事罰の対象としていること等です。

世界の様々な宗教のネットワークであるWCRPは、「他者を歓迎する(Welcoming the other)」を共通目標に、誰一人取り残さない包摂的な社会の構築をめざしてきました。あらゆる宗教は人に対する愛、隣人愛、兄弟愛、家族愛、人類愛を説いており、そして、その実践として移民・難民を受け入れ、保護、支援、そして共に生きていくことを大切にしてきました。WCRP日本委員会も、日本に住む宗教者として、これまで微力ながらインドシナ難民やシリア難民の受け入れを実施してきましたが、その中でいかに難民の方々が、悲惨な戦禍から命の危険を賭して日本に逃れ、慣れない土地の中で必死に生活しているかを目の当たりにしてきました。

本法案の審議にあたり、改めて、日本政府と国会議員に対し、すべての人の命は、国籍や在留資格に関係なく、等しく尊いとの観点から、人道的知見に基づき、国際人権基準に則った出入国管理及び難民認定法の議論がなされることを要請します。そして、ウイシュマ・サンダマリさんの死が問いかける入管収容施設における人権侵害、さらにはその根本要因である排他的な難民認定制度に対しても、決して目をそむけず人間の尊厳と基本的人権に基づいた、誠実な対応と議論を行うことを訴えます。

WCRP日本委員会も、引き続き、世界のネットワークと共に、祈りと行動を通して、難民をはじめ保護を必要とする方々が、どこであっても平和と安心のうちに生きていける世界の実現に力を尽くします。

2021年6月3日
公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
理事長 植松 誠

出入国管理及び難民認定法改正案に対する人道的見地を求める声明(PDF)