公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

同事行

曹洞宗宗議会議員・WCRP日本委員会理事 来馬宗憲

このたび「WCRP」の理事を拝命することになりました来馬宗憲と申します。

日本では夏のお盆が過ぎますと、九月にはお彼岸の季節がやってまいります。どちらもご先祖様を供養する年中行事ですが、お中日を中心としたお彼岸の一週間は、お墓参りをして故人を偲ぶだけでなく、善行に努め、自分自身を整える修行期間ともされています。

自己を整えるための実践修行として、曹洞宗の経典『修証義』の中に「四摂法(ししょうぼう)」という教えがあります。これは「布施」「愛語」「利行」「同事」という、人が行うべき四つの行為(菩薩行)のことでありますが、「WCRP」の理事を拝命するにあたり、曹洞宗において昨年より指標とさせていただいている「同事」について少し触れさせていただきたいと思います。

「同事」とは同じこと、違わないこと、自分自身が他人と同じ立場にたって考え行動し、同じ目線で付き合うことです。どちらが上とか下とか優劣を争ったりせずに、相手のことを我がことと同じに考え、思いやることが大切であるという御教えです。それぞれの教えや伝統も異なる様々な宗教者が集まり、人々の幸せと世界平和を願う「世界宗教者平和会議(WCRP)」の理事就任にあたり、まさしくこの「同事行」の実践が必要であると感じました。

近年のロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、世界各地で止むことのない紛争についても、相手の立場を我がことのように考えられずに行動してしまった結果のように思えてなりません。人の命を奪い、自然を破壊し、エネルギーを浪費する戦争とは何と愚かな行為でしょうか。それは人間に対してだけでなく、他の動植物、すべての生き物に対しても同じです。近年の異常気象、絶滅危惧種の増加、環境破壊など、他をかえりみない、とどまることを知らない人間の欲望によって地球全体が脅かされています。

「WCRP」は、世界の人々が民族・伝統・宗教・考え方などの違いを認め合い、尊重しながら、平和に人間らしく生きていける社会を目指しています。そのためには、他の生物やすべての生命あるものへの思いやり、慈悲心を持つことが必要であり、それが「同事行」であります。

この「同事」の心を互いに持ち、その輪が広がれば、世界平和を目指すことができ、地球の環境破壊の歯止めに繋がるのではないかと考える次第です。

(WCRP会報2023年9月号より)

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