公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

非暴力の招き

ベリス・メルセス宣教修道女会会員・WCRP日本委員会人身取引防止タスクフォースメンバー 弘田しずえ

国際パックス・クリスティのカトリック非暴力イニシャティブは、2016年から非暴力の精神と実践を現代世界の様々な暴力の現実に訴える働きを続けています。行動的な非暴力とは、単なる平和主義ではなく、生き方であり、霊性であり、社会変革のための積極的で強力な力であり、国際社会の平和を構築する具体的な手段です。それは、一人ひとりの人間の尊厳、権利、対等の真理に根ざし、暴力や殺傷力を伴わずに、暴力を終わらせ、紛争を変革するプロセスであり、弱者を保護するための手段です。行動的非暴力は、正義を実現する方法であり、創造的な関与と断固とした抵抗によって、勇気ある人々の力を結集します。非暴力は紛争から逃れるのではなく、積極的かつ力強く紛争に関与し、それを変革します。

カトリック非暴力イニシャティブのメンバーは、2022年5月にウクライナを訪問し、ウクライナ国内において非暴力の抵抗を続けている人々に出会い、非暴力の抵抗は、実際人々のいのちを守り、暴力を変革する可能性のあることを確認しています。具体的には、ロシア軍が侵攻している場所において、タンクを止める非暴力の抵抗、捕虜の交換の交渉、避難路の確保の交渉などによって、ウクライナ軍が武力による抵抗を展開している場所よりも死者、負傷者の数が遥かに少ないことが実証されています。米国平和協会のマリア・ステファンは、20世紀の300以上の紛争を調査し、武力によらない紛争解決が、恒久的平和をもたらすことを実証しています。

教皇フランシスコは、 毎月祈りの招きの短いビデオ・メッセージを発信していますが、今年3月30日、傷ついた世界の癒しのために、非暴力の精神と実践が教会の中心的な使命であることを指摘し、「非暴力の文化」のために4月の1ヶ月間祈るよう世界中の人々に呼びかけました。「日常生活においても、国際関係においても、非暴力を私たちの行動の指針にしてください。 そして、非暴力の文化を広めるために祈りましょう。非暴力は、国家と市民が武器の使用を減らすことを意味しています。戦争、武力によるすべての対立は、常に敗北に終ります。暴力なしに生きること、話すこと、行動することは、何かを放棄したり、失ったり、あきらめたりすることではなく、全てに対して明確な意思を持つことです。非暴力は、日常生活においても、国際関係においても、私たちの行動の指針となります」

ミャンマー、ウクライナ、スーダン、銃による市民に対する無差別の殺戮の現実に対して、信仰に基づく宗教者の非暴力の決意と行動が、さらに求められています。合掌

(WCRP会報2023年6月号より)

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