公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

理想の社会

解脱会理事長・WCRP日本委員会理事 岡野英夫

平和な世界と安心な生活は、世界中の誰もが望んでいます。また、その望みは如何にしたら叶えられるのかということを絶えず思考し、生活を営んでいます。幸せを望むことは人生を歩む上で自然な情ですから、すべての人々が我が身、我が家族、我が国の安寧と幸福を希求し、努力することは当然なことです。

しかしながら、社会の表面だけを見ますと、真面目に努力する人が苦しみ、不真面目な人が栄えるように見える場面もあり、それが故に不公平な世の中だと考え、世を呪い人と敵対するような危険な思想を生み、ついには神仏を疑うようになります。その心がさらに悪化して地域や民族紛争に発展し、或いは限りなく社会悪を生み出すことになりかねません。

今、大きな時代の転換期の中で、国際社会は国家間の紛争や民族間の闘争、気候変動により多発する大災害や危機的状況の社会経済、先進国でさえ急増する凶悪犯罪など多くの問題を抱えています。人類の平和と希望とが、功利主義者の毒牙に崩れたるは余りにも悲壮です。私たちは、自己心中に清らかなる神性、仏性とともに残酷なる狂気をも孕んでいる存在であることを認識しなければなりません。我が国においても、罪のない人々を無残に殺めてしまった事件が多発しています。家庭や学校で間違った教育を受けた子供たちは、善悪の判断もつかない利己的で独善的な思考に染まり、精神を病み、犯罪に走ってしまう傾向があります。教育は人間形成の上で大きな影響力を持っていますが、現在の学校教育では、倫理道徳や宗教を学ぶことは出来ませんし、立派な人格を形成する要素も十分ではありません。日本の将来を担う若者が偏った国家観や人生観を持っているとしたならば、それは大変憂慮すべき事態であり、戦争を肯定するようなことにもなりかねません。

私たちは、コロナパンデミックによって、世界人類をはじめとするすべてのものが渺(びょう)として一脈なる生命の中に存在し、万有は互いに支え合いながら生かされ養われていることを恐怖と悲しみの中で学びました。世界民族が興亡死活の岐路に立っていた時には、世界全体が想像を超える規模で団結して、パンデミックの脅威と対峙してきました。それは、有史以来初めての素晴らしい出来事であったと思います。その姿こそが、神が人類に求めていることであり、人類が進むべき道であり、理想の社会なのだと思います。

(WCRP会報2023年11月号より)

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