公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

感謝とともに

明治神宮宮司・WCRP日本委員会評議員 九條道成

初めてアッシジを訪れ、抜けるような青空の下で宗教者と祈りをともにしたのは平成23年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世の呼びかけで世界平和を祈る宗教者の集いがこの地で開かれて25周年のことでした。各宗教宗派の代表者、信者や大勢の市井の人々が集って発する“思い”の強さは忘れられません。

昨年来、不要不急の外出が制限される中、社会活動の抑制により心なしか澄み切った青空に包まれる境内では、参拝者の姿がまばらな日が続きました。

この静けさの中で改めて気づいたのは、人々の真摯な祈りでした。長い参道を本殿まで進み、老若男女を問わず、ひたむきに手を合わせる姿。絵馬には「コロナがなくなりますように」という子どもの文字も見られました。皆、自らのこともそうかもしれませんが、家族や医療従事者、社会や世界のことを思っての祈りであったことでしょう。

新型コロナウイルスによって、地球上に住む私たちはひとつに繋がり影響しあっていること、また、お互いがお互いのことを思うことの大切さを改めて感じさせられたのではないかと思います。一方で、人と人とが自由に会えず、表情はマスクで隠されるといった、“繋がり”を分断するような反作用が世界中を覆ったのも事実です。

「いのちの繋がり」や「心の繋がり」を大切にする宗教者として一体どのような役割を果たせるのか。しかも、この大きな禍の中にありながら、アフガニスタンをはじめ、アジア、アフリカでは武力を伴う争いがあり、欧米においても人権・人道に関わる問題が生じています。誰しもが望む平和はどう実現していけるのか。

折から11月24 日には京都でのWCRP創設50周年記念式典に参加させて頂きました。これまで半世紀にわたり宗教者が集うことで多様な信仰への理解が深まり、心の壁が取り払われてきたことは間違いございません。先人たちの弛みない努力に敬服申し上げるばかりです。

その前日(11月23日)は新嘗祭、自然の恵みや生かされていることに感謝を捧げる日でありました。こうして穏やかに感謝の心を寄せ合えることが平和の第一歩であり、その場を提供することが神社の使命の一つであるとするならば、一日も早く、国内外から大勢の参拝者が自由に訪れる日がくることを願うばかりです。

10年前のアッシジの空を思い出しながら、微力ではございますが、世界中の人々が笑顔で新しい年を迎えられることを、明治神宮の杜から祈りたいと思います。

(WCRP会報2021年12月号より)

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