公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

未来に向けてともに歩む

カトリック広島教区司教 白浜 満

G7広島サミット(5月19日~21日)を前にして、WCRP主催「宗教者による祈りとシンポジウム」が、広島の「世界平和記念聖堂」で開催されました。会場には約200名、オンラインでも世界11カ国から、約300名の参加がありました。世界の諸宗教者が、真の平和に向けて、ともに祈り、考え、意見交換をする機会を持つことができたことに、諸宗教者の一人として、大変、嬉しく思いました。

7広島サミットで、核兵器廃絶の分野のために発信された「広島ビジョン」は、「核不拡散条約」(NPT)の体制の確認にとどまり、大きな進展は見られませんでした。しかし、G7の首脳たちが原爆資料館を訪問し、慰霊碑に献花されたことは、被爆者の想いが首脳たちの今後の発言や取り組みに影響を及ぼす要因になって行くのではないでしょうか。カナダのトルドー首相は、サミットの公式日程を終えた後、個人的にゆっくりと原爆資料館を訪問することを望まれ、再訪していました。とくに世界で指導的な立場にある方々の心に根本的な変化がなければ、核軍縮、そして核兵器廃絶を実現していくことは不可能です。G7広島サミットを機会に、新たなメッセージを発信したローマ教皇フランシスコは、次のように述べています。

「21世紀の多極化した世界において、平和を追求することは、安全保障の必要性とそれを保証するための最も効率的な手段に関する考察に、密接な関係があることが、ますます明らかになっています。このような考察において、世界規模の安全保障というものが、食料と水へのアクセス、環境の尊重、医療、エネルギー源、世界の富の公平な分配などといった諸問題を包含する総合的なものでなければならないことを考慮しなければなりません。総合的な安全保障の概念は、多国間、また政府・非政府間の国際協力を支持するものであり、これらの諸問題の間には深い相互関連があり、責任ある多国間協力のアプローチを共に採用することが必要です。」

「総合的な安全保障」構築のために、責任ある多国間協力のアプローチは、人間の心の変化を土台としています。多国間協力のアプローチの一つの次元として、世界の諸宗教者が、人々の心の中に、人類家族の共通の家(地球)を大切にし、自然と調和し、皆が協力してともに生きて行く「友愛と連帯を生み出す力」となることができればと願っています。

(WCRP会報2023年7月号より)

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