新型コロナウイルスの感染がまん延するなか、本宗では、今年四月、十年に一度の大法要として「宗祖上人ご生誕百五十年祭」を執行させていただきました。信徒同行が一堂に会しての法要は実現できませんでしたが、法要のライブ配信という新しい試みも行われ、来秋こそは、信徒同行に大本山へ足を運んでいただいての大法要をと準備させていただいているところです。
昨今の世界情勢をみますと、ミャンマーでの内乱、アフガニスタンからの米軍撤退による混乱、北朝鮮によるミサイル発射など、平和が脅かされる状況が続いています。思えば二十年前の同時多発テロの後、いち早く宗教者への平和活動を呼びかけたのがWCRPでした。
本宗では、世界の平和は私たち一人ひとりの心の平安から、という発想のもと、「心よりそう」を合い言葉に、いつでも仏様に心を向け、また周囲の苦しむ人々にも心を寄り添わせよう、という実践を呼びかけています。
宗祖は「親を、ご先祖様を、世の人々を喜ばせることがよいことである」と説かれ、自らも率先して社会福祉に取り組まれました。「世界平和と万民の幸せ」を具現していくことが「宗祖のご本願」であり、本宗では平和活動の一環として、週に一度一食分を断食して浄財に替え、感謝の気持ちを献金に表す感謝運動の実践を推奨し、今年もユニセフを通じて、ブータンの僧院・僧尼院で学ぶ子どもたちの支援に役立てていただこうと寄付活動の継続を決定させていただいたところです。
コロナ・パンデミックはワクチン接種の普及などにより重症化が抑制され、最近では半年ぶりに緊急事態宣言が全面解除されるなど、明るい兆しも見えておりますが、終息には、まだ長い道のりが続くことが予想されます。
しかし、このコロナ禍を通して、今まで当たり前と思っていたことが、当たり前ではなく、とても貴重で有り難いことだったことに改めて気づかされました。布教のみならず行事や法要など、多くの人が関わる宗教の現場では、より一層その感を強くします。そして、どんな時も私たちを見守り包んでくださっている仏様によって生かされ、多くの人たちによって支えられている我が身であることを実感させていただく今日この頃です。
さて近年、九州では異常気象ともいえる大変な豪雨が続いており、何十年に一度という豪雨が毎年のように押し寄せ、被害も深刻化しています。六年前、国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は、「宗祖のご本願」具現を目指す本宗にとっても新たな指標となるものです。「誰一人取り残さない」という理念のもと、大いなるいのちに包まれている兄弟姉妹どうし、宗旨宗派の垣根を超えてお互い協調し合い、限りある資源を大切にすべく地球温暖化問題に危機意識を持って取り組んでいかなければなりません。そのためには、地域と連携して災害に備えるのみならず、日々の私たち自身の節約意識を高め、平和を祈り続ける姿勢が大切ではないかと実感しております。
(WCRP会報2021年11月号より)